大げさではなく、読むと人生が変わる本です。
アドラーの教え
フロイト、ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」、アルフレッド・アドラー。
オーストラリア出身の精神科医であった彼が20世紀初頭に創設したアドラー心理学は、デール・カーネギーの「人を動かす」や、スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」にも影響を与え、人間理解の心理、到達点として受け入れられている。
人生に悩んだらとにかくこの1冊。悩んでなくてもこの1冊。
僕たちの心の中に確かに存在する勇気。その使い方を教えてくれる本だ。
対話の素晴らしさ
世界はシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる。
そんなことを説く哲学者のもとに、人生に悩む青年が訪れる。
哲学者は青年を快く迎え入れ、対話の中でアドラーの教えを伝える。
「青年」と「哲人」による劇的な対話。
このドラマチックな対話が本書の最大の魅力だ。
厳しい両親に育てられた青年は、うまく人と関わることできずひねくれた性格になってしまったことを嘆き、この世の中を恨んでいる。
そんな青年が、哲人との対話により、生きる勇気を取り戻していく。
対話の中で、自分のもとを訪ねてきてくれた若い青年に対して哲人はこんな言葉をかける。
私にとってのあなたは、かけがえのない友人です。
青年にバリバリ感情移入していた僕はここでまずうるっときた。
一方的に説くのではなく、対話によってお互いを理解する。僕もいつかそんな対話ができる大人になりたいと思った。
すべての悩みは対人関係
学歴、年収、容姿、職業…様々な劣等感に悩む青年に対し、哲人は言う。
劣等感は主観的なものであり、自分自身が与える価値によって、劣等感は劣等感でなくなる。
私たちは他者と何かを比べることによって、主観的に「劣っている」と思い込み、苦しむ。この思い込みを変えれば悩みはなくなる。短所は長所であり、長所は短所。大事なのは、それを自分で決めること。
哲人自身の身長に関するエピソードで僕自身も救われ、また泣いた。
客観的な事実は動かせないが、主観的な解釈は自分でいくらでも動かすことができる。
僕たちは人と価値を比べることによって悩み苦しむ。価値は、人間同士が作る社会によってつくられたもの。
悩みはすべて対人関係。対人関係の悩みが解決できれば、人生の悩みはすべて解決する。
悩みの原因はシンプル。だからこそ、解決方法もシンプルだ。
劣等感は成長するためのエネルギー
人はもともと「向上したい」、「理想の状態を追求したい」という欲求を持っている。
「自分はまだまだ未熟だ」という劣等感をバネに努力し、成長する。人類はそうやって進歩してきた。
しかし、「どうせ自分なんて…」「どうせ頑張ったところで…」などと、劣等感をあらゆることの言い訳にする状態は、「劣等コンプレックス」であり、劣等感とは別物だ。
○劣等感をバネに努力し、成長する
×劣等コンプレックスを抱いて行動しない
劣等感を言い訳に使うのではなく、劣等感を行動のエネルギーに変えることが大切だ。
パワーワード「他者の課題」
かつて僕の職場に、他人の目を気にせず、常に自分の強い意志に基づいて発言し、行動している仲間がいた。
そんな彼に僕は聞いた。「他人に嫌われるのが怖くないのか?」「他人にどう思われるか不安じゃないのか?」
彼は答えた。「それは他者の課題です。」
その後、僕は本書でこの言葉に出会った。
アドラー心理学では、大前提として他者から承認を求めることを否定する。「われわれは他者の期待を期待を満たすために生きているのではない」と。
他者の承認、他者の評価、他者が抱いた「こんな人であってほしい」という期待。これらにとらわれて生きることは、他者の人生を生きることになる。
自分は自分のために生きており、他者は他者のために生きている。
その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのが他者ならば、その課題は「他者の課題」。他者の課題は切り捨て、自分の課題にだけ向き合うことで、人生の悩みは激減する。
そのことを知っていた彼は職場を去った。その選択の結末を背負うのが彼自身である以上、彼の未来は、僕にとって他者の課題。
僕の課題は、また彼に会えた日に、どんな言葉のプレゼントができるかということ。そしてそれを受け取った彼がどう思うかは、彼の課題だ。
勇気を持って自由になる
劣等感と正しく付き合い、他者の課題を切り捨てることができれば、悩みはほぼなくなる。
あとは理想の自分を追い求め、ひたすら前に進むだけ。完全に自由だ。
自分の人生を自由に生きるためには、勇気が必要だ。他者の課題を切り捨てることによって、誰かから嫌われるかもしれない。
だからいるんだ、嫌われる勇気が。
他人に嫌われることと引き換えに、自由が手に入る。このことを知った瞬間、僕は涙が止まらなかった。他人の目を気にしていた僕は、いつも不自由だった。自分自身でその生き方を選択していたんだ。
もう気にしなくていい。僕は自由を選択する。幸せに生きるために。
物語は続編「幸せになる勇気」へ
自由に生きる勇気は手に入れた。あとは勇気を使うだけ。
晴れ晴れとした気持ちで哲人のもとを去る青年。
しかし現実はそう甘くはなかった。
嫌われる勇気を手に入れた青年と僕は、その後どんな困難に直面したのか。そしてその現実を乗り越えるためには、さらにどんな勇気が必要なのか。
この本には続きがある。青年も僕も、まだまだ学び続ける必要がある。
続編「幸せになる勇気」を読むことで、きっとまた少し「幸せ」という答えに近づけるだろう。
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