人間は 悪と欲とが 主成分
1
最近、何かに熱狂したことはあるだろうか。
仕事、食べ物、エンターテイメント…僕たちは熱狂できるあらゆるものに囲まれている。
実はその熱狂、自ら望んで熱狂しているのではなく、計画的に熱狂させられているだけなのかもしれない。さらに熱狂の結果、本来の動機や目的を忘れ、道を踏み外してしまっているかもしれない。
僕たち人間の気持ちや行動には特徴があり、企業はそれを踏まえて戦略を練っている。そのことを知らずにただただ踊らされるのは悔しい。少しだけでも自覚した上で、熱く狂いたいものだ。
2
去年の夏は正に熱狂だった。魂が震えた参議院選挙。もはや諦めていた航海、乗るならこの船しかない。僕だけでなく多くの人がそう思ったはずだ。
熱狂から1年。この間僕は完全に内集団バイアスに陥っていた。
【内集団バイアス】Ingroup bias
自分が属している集団には好意的な態度を取り、そうではない集団には反対の態度をとる傾向。「内集団びいき」とも呼びます。「地元が同じ」といった緩いものから、学閥・財閥グループなどの鉄の掟で結びついた集団まで範囲は様々。実際に存在する集団だけでなく、目に見えないレッテルのようなものも集団と感じれば内集団バイアスが発生する可能性はあります。
人は悪魔に熱狂する|松本健太郎
テレビや新聞とは明らかに違う意見を魂で叫ぶ候補者の演説に熱狂した僕は、いつの間にかこの人たちと同じ志を持っているのは「気づいている人」で、そうではない人たちは「気づいてない人」だというレッテルを貼り続けていた。
結果、身の回りで必要のない対立を生み出してしまったこともあった。僕が熱狂した集団の本来の目的はみんなでこの国を良くしていくことで、決して対立を煽ることではなかったにも関わらず。
熱狂をエネルギーに変えて行動することは生きていく上で重要なことだが、本来の目的を忘れてはいけなかった。日本人がずっと大事にしてきた和の精神。反省の多い1年だった。
3
ここ最近、資格取得にも熱狂した。
簿記3級、FP3級、ITパスポート。どれも無事ギリギリ合格できたが、得た知識を実際の生活に活かせているかどうかはとても怪しい。
そもそもなぜこれらの試験を受けようと思ったのか。そこには同調バイアスが見え隠れする。
【同調バイアス】Conformity bias
次の行動を選択する際に、まずは他人の行動を観察してから、大勢が選んでいるのと同じ内容を選ぶ傾向。強いこだわりがない場合、選択が不安な場合は、とりあえず周囲に合わせようとします。皆と一緒だと安心できるのかもしれません。
人は悪魔に熱狂する|松本健太郎
僕が受験した資格はどれも人気の資格だ。自分の人生の目標達成に必要だからという理由よりも、皆が取っているからという理由の方が大きかったかもしれない。試験が終わった瞬間にほとんどの内容を忘れていることからもきっとそうだ。
だが完全にお金と時間が無駄だったかと言われると決してそうではない。(と思いたい。)理由は単純接触効果だ。
【単純接触効果】Mere exposure effect
初めは興味がなかったり、苦手だったりしても、何度も見たり聞いたりしているうちに良い印象に変化する傾向。音楽や衣服、あるいは広告のようなものだけでなく、対人関係にも当てはまると考えられています。
人は悪魔に熱狂する|松本健太郎
資格の勉強中、関連する知識に繰り返し触れ、徐々に問題が解けるようになって嬉しくなり、単純接触効果で好きになってしまっていた。
簿記の知識、お金の知識、ITの知識に多く触れる時間があったことで、以前よりもそれらに馴染みを覚えていることは事実だ。これがいつか今後の長い人生の中で活きてくるに違いない。(と思いたい。)
4
ここ1、2年の自分自身の状況を見ても、様々な偏見を持っているが故に熱狂し、時に間違った行動を取っていることがわかる。「自分は正しい」ということ自体が間違いだ。
自分は成長した。自分は分かっている。そんな気持ちになってきた時は、ダニング=クルーガー効果によるものだと認識した方がいい。
【ダニング=クルーガー効果】Dunning-Kruger effect
能力の低い人物は自身の能力を過大評価する傾向にあり、逆に能力の高い人物は自身の能力を過小評価する傾向にあります。なぜなら能力が低い故に「不足」を認識できておらず、他者の能力もまた正確に推定できないからです。しかし訓練を積み実力が付き始めると、能力の欠落を認識できるようになります。
人は悪魔に熱狂する|松本健太郎
僕たちは不足しているからこそ、それを補うために訓練を積む。しかし不足していること自体が分かっていなければ、訓練すべきかどうかも分からない。故に訓練しない。その結果、訓練し続ける人としない人の差は広がり続ける。
訓練中、不足していることがあまりにも多いことに気づいて嫌になってしまったら、実力が付いてきた証拠だ。一緒にウンザリしながら訓練を続けよう。気づいたらいつの間にかとんでもないところまで来ていた。そんな未来を想像しながら。
コメント